Se connecter時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。
「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」
「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」
「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」
衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。
「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」
「今はないけど、誰かに誘われたら入ろうかなって思ってます」
黎慈(れいじ)がそう言うと、衣百合(いゆり)は提案をしてきた。
「じゃあさ、私と同じ陸上部に入らない?体力作りにもなるし、いいと思うんだよね!」
「前向きに考えておきます。友達がいると心強いし」
「本当に!じゃあ、明日顧問の先生に話しておくから、見学でもいいから見にきてよ!」
2人でそんな話をしていると、シャワーから上がった亮(りょう)が来た。
亮(りょう)は2人が話しているのに気がついたらしく、そそくさと自分の部屋に帰っていった。
衣百合(いゆり)は、亮(りょう)がシャワーから上がったのに気づいており、シャワーを浴びに行った。
黎慈(れいじ)も、衣百合(いゆり)がシャワーから上がるまで、自分の部屋で待つことにした。
数十分後、下の階で扉が開く音がしたので、ロビーに行ってみることにした。
ロビーのソファーにはジェラピケ姿の衣百合(いゆり)がいた。
今ならシャワーを浴びれると思った黎慈(れいじ)は、着替えを持って風呂場に向かった。
数十分でシャワーを浴び終わると、服を着替えて自分の部屋で夢の世界に入る準備を始めた。
アイマスクを準備し、ベッドメイキングを終わらせ、明日の準備も入念した。
色々作業をしたり音楽を聞いていたりすると、時間は深夜23時。
黎慈(れいじ)は夢の世界に入るために、アイマスクをつけて就寝した。
意識が沈む瞬間、胸の奥でざわめきが広がった。
これから何が起きるのか――。
「いらっしゃいましたね。お待ちしていました」
聞き慣れた少女の声が響いた。
目を開けると、隣に景佑(けいすけ)の姿があった。
いつもと同じ青白い空間ではなく、赤と青の光が渦巻く混沌とした場所。
空気自体が重く、肌にまとわりつくような感触だ。
「ここは……夢でも現実でもない世界。夢への入り口です」
少女は静かに続けた。
「この夢の世界は特殊で、夢の中で起きたことは現実にも影響を及ぼす可能性があります」
景佑(けいすけ)が即座に反応した。
「可能性って? もっと詳しく説明しろよ。それに、あんたは一体誰なんだ?」
「今はまだ名乗れません。時が来たら、教えます」
少女の声は穏やかだが、どこか切実だった。
「現実への影響はあくまで可能性です。だからこそ、あなた方にこの夢のことを調べてほしいのです」
「ついてきてください。夢の入り口まで案内します」
少女に導かれるまま歩くと、数分で赤白く輝く扉が現れた。
「ここが、夢の中に入れる扉です。危険を伴うかもしれません。これを」
少女が差し出したのは、ヘッドフォンに似た装置だった。
「危険を感じたら耳にかけてください。現実へ帰りたい時は、手を空に掲げて握り、自分の心へ戻るイメージを」
「ご武運を」
少女の言葉が終わると同時に、視界が明るく弾けた。
──そこは、冨永山(とみながやま)町に似た街並みだった。
ただし、少し歪んでいる。
学校の張り紙が不自然に貼られ、生徒らしき影が闊歩する。
空気は淀み、遠くで奇妙なざわめきが聞こえる。
「ここ……うちの町だよな?」
景佑(けいすけ)が周囲を見回しながら呟いた。
黎慈(れいじ)も頷きかけたその時、一人の生徒がこちらへ近づいてきた。
景佑(けいすけ)が声をかけようと一歩踏み出す。
「景佑(けいすけ)、待て! やばいぞ!」
黎慈の警告が遅かった。
生徒の体が真っ二つに裂け、中から黒い化け物が飛び出した。
牙を剥き、異様な速さで景佑(けいすけ)に襲いかかる。
「っ!」
黎慈(れいじ)は咄嗟にヘッドフォンを耳にかけた。
瞬間――。
体の中に、熱い奔流が流れ込んだ。
心臓が激しく脈打ち、視界が一瞬白く染まる。
頭の中で、誰かの声が響いた。
『汝、夢の探究者とお見受けする』
『我が力を貸そう。その時が来たら、莫大な力を授けよう』
『今は汝の片翼となり、生き続けようぞ!』
体が勝手に動いた。
人間とは思えない速度で地面を蹴り、化け物に肉薄する。
拳を振り抜くと、衝撃が腕全体に響き、化け物の体が灰のように崩れ落ちた。
「は……っ!?」
息が荒い。
拳の先が熱く痺れ、力が体内で渦巻いているのがわかる。
「これは、一体…?」
恐怖と興奮が混じり、胸が熱く高鳴る。
まだ制御しきれない力が、筋肉の一本一本を震わせていた。
景佑(けいすけ)が恐怖で足を竦ませている。
黎慈(れいじ)は手を差し伸べた。
「立て、景佑(けいすけ)!」
景佑(けいすけ)が手を掴むと同時に、再び化け物が四体現れた。
今度は一斉に襲ってくる。
「俺の後ろにいろ!」
黎慈(れいじ)は正面から馬鹿正直に突撃してくる二体を相手に取り、拳を振るう。
動きは単調。だが、力強い。
一体を倒すと、二体目がすかさず攻撃を仕掛けてくる。
攻防に意識を持っていかれて、一匹が体の横を通っていった。
一匹が景佑(けいすけ)を狙って飛びかかり、押し倒す。
「景佑(けいすけ)!」
景佑(けいすけ)の顔が血の気を引いていた。
手元を慌ただせて、必死にヘッドフォンを耳にかけた。
その瞬間――。
景佑(けいすけ)の体が輝き、炎のようなオーラが爆発した。
その瞬間、景佑(けいすけ)に飛びかかっていた化け物が体ごと空中に放り出される。
そして、その体が空中で弾け飛んだ。
「うおおっ! この力……すげえ!!」
彼は笑いながら道路に仰向けでいた。
そのまま起き上がり、向かってくる一体に向かって炎を放つ。
炎は見事に命中し、化け物を焼き尽くした。
黎慈(れいじ)も最後の化け物を叩き伏せた。
二人は一度戦線離脱をし、息を荒げて路地裏に身を潜めた。
「黎慈(れいじ)……お前も手に入れたんだな」
「ああ。お前もか」
互いに視線を交わす。
体の中に残る熱い余韻。
正体もわからない力だが、確かに自分たちのものになった実感があった。
「今日は一旦引き上げよう。また明日、学校で落ち合おう」
「ああ」
二人は同時に手を天に掲げ、握り締め、心へ戻るイメージを強く描いた。
視界がゆっくりと暗くなり、現実への引き戻しが始まる。
黎慈(れいじ)の意識が沈む直前、胸の奥で確信が芽生えていた。
この力は、ただの夢の産物ではない。
この町の「夢」の秘密に、確実に近づいている――。
夢の世界に入ると、いつもの青白い空間に、あの女性が立っていた。「少し、面倒なことになっているようです」「面倒?」女性は複雑そうな表情を浮かべた。「どうやら、あなた方二人以外にこの世界に立ち入った者が…」「しかも、たった今」「!」黎慈は椅子から即座に立ち上がった。「どこにだ! 教えてくれ!」「一旦冷静にお願いします。先程、お連れ様にも話をしておきましたが…」「まぁ、私の話も聞かずに飛び出して行きましたけど」黎慈は深呼吸をして、再び椅子に腰を下ろした。「ただ……」「ただ?」女性は一呼吸置き、静かに続けた。「この話は、我々にとって悪い話という訳でもないようです」「どういうことだ?」「どうやら、我々以外の部外者がこの世界に立ち入ると、夢の力が収まるようです」「弱まるとどうなるんだ?」女性は少し考え込んだ後、自分の見解を述べた。「おそらくですが、ご自身のブラムの限界を超えて使用できるようになるかと」「ただ、それなりのリスクもあるようですが……」「リスク?」「言っていなかったのですが、ブラムは自身の精神を削って発動させているんです」「そういう経験、最近ありませんでしたか?」言われてみれば、最近疲れやすくなった気がする。衣百合からも目の下の隈を指摘されていた。「自身の精神をさらに削り、人知を超えた力を発揮できる」「もしかしたら、この世界を丸ごと消滅させられるような力も……」「そんな力が……」黎慈は自分の手の平を見つめた。「ただ、物凄い代償が付いてきます」「最悪、夢から目覚めることができなくなる可能性も否定できません」二人はしばらく黙り込んだ。黎慈が静かに聞いた。「ところで、なんで弱まるんだ?」「この世界は、誰もが持っている第二の世界なんです」「所謂、パラレルワールドのような類として考えてもらって構いません」「現実に実際に生きている人は、ここでも等しく生きています」「意識しているかどうかの問題です」黎慈は俯いて考え込んだ。「……理解し難い話だな」「重々承知の上でお話ししています」重たい沈黙が流れた後、女性は続けた。「誰かがこの世界を『現実』として認識する」「つまり、認知されると、夢全体の力が弱まるようです」「認知されると、あの化け物に襲われるんじゃないか」「……おそらくは」黎慈はその
黎慈がグラウンドに戻ると、端の方で部長の桜乃泰芽が他の部員たちと談笑している姿が見えた。近づいていくと、泰芽が大きな声で手を振ってきた。「おーい、きてきて~」他の部活からも注目が集まるほどの声量だった。少し気恥ずかしくなった黎慈は、足早に駆け寄った。「声でかいですよ」「ははっ」黎慈は周りを見回した。「休憩中ですか?」「そう。でも、今日はもう終わりだけどね」「あれ?意外と早いんですね」空はまだ明るく、野球部やサッカー部は練習を続けていた。「まあ、そんなマジでやる雰囲気じゃないしね」「……そう言うもんですか」泰芽は空を見上げながら続けた。「みんな予定あるらしいしね」「まぁ、かくいう俺もそうだけど……」「お?彼女さんですか?」黎慈がからかい気味に聞いた。泰芽は声を高らかに笑った。「んな訳。バイトだよ」スマホに目をやり、泰芽が明るく言った。「じゃあ、最後のメニューいくぞ~。黎慈もせっかくだしやってくか!」「ぜひ、お願いします」泰芽の掛け声で部員たちが気だるそうに立ち上がった。最後に200メートルを三本走り込み、黎慈は汗を拭きながら寮への帰路についた。寮に着くと、玄関のガラス越しに衣百合がソファーに座っているのが見えた。中に入ると、衣百合がすぐに気づいた。「おかえり。今まで部活だった?」「ただいま。そうだよ」黎慈はバックを勢いよく下ろし、衣百合の対面に座った。二人の間に数秒の沈黙が流れた。「……ところでさ」「うん?」衣百合が目の色を変えて言ってきた。「どう思う?あの子の存在」「?どう思うって…」「普通ではないよな」「やっぱそうだよね~~」衣百合は体を後ろに倒した。「名前も知らないし、面識もない」「少なくとも普通の女の子には見えなかったな」「そりゃあそうだよね…」「でも、それ以外のところが少し気がかりなんだよね」黎慈はため息をついた。「流石に考えすぎ。休息取った方がいいよ?」「それは黎慈くんもでしょ」「目の下の隈、すごいよ?」「え?」黎慈は慌ててスマホのカメラを起動し、自分の顔を確認した。確かに、目の下に濃い隈ができていた。「なんで誰も言ってくれないんだよ……」「流石にみんな気遣うでしょ」黎慈は立ち上がり、着替えるために荷物を持って部屋へ向かった。「とりあえず、着替えて
空き教室に着くと、衣百合の他に小柄な女子生徒が座っていた。一年生くらいだろうか。黎慈が入っていくと、衣百合がすぐに声をかけてきた。「お! 結構早かったね」「さっさと抜けてきたからね」「で、話ってのは?」「あと、そちらの方は?」衣百合は立ち上がり、小柄な女子を紹介した。「この子は一年生の子」「名前はちょっと伏せるんだけど、何やら『夢』について知っているらしくてね」「それで、私に放課後連絡くれたんだ」女子生徒が緊張した様子で頭を下げた。「は、初めまして、黎慈さん」「先ほど、衣百合さんから説明はもらいました。転校生の方なんですよね?」「ちゃんと説明してもらえたみたいだね」「そうだよ、今年からこの街に来た枝先黎慈です」黎慈は軽く会釈をして、用意されていた椅子に座った。衣百合も座り、真剣な表情になった。「じゃあ、早速本題に」女子生徒が少し震える声で話し始めた。「昨日、夢を見たんです」「今、目の前にいる黎慈さんと衣百合さんが出てくる夢を」「……!」黎慈が息を呑むと、衣百合が落ち着いた声で一般論を挟んだ。「そう、一般的に夢には自分が会ったことがある」「見たことがある人が出てくると言われている」「私は生徒会とかで見るかもしれないけど、黎慈くんは違うよね」一度も見たことない人が夢に出てくるのは変な話だ。『もしかしたら一度会っているのかも…?』と思って黎慈は記憶を巡らした。だが、見た記憶はない。「でも、実際に俺を見たのは今、この時間が初めて」女子生徒は目を伏せた。「ほ、本当になんでもないかもしれないんですけど……その夢の内容が肝心で……」一同が息を呑む中、女子生徒は震える声で続けた。「衣百合さんが……死んで……」その子の目が潤んでいる。衣百合は優しくその子の背中をさすった。「どういう内容だったか、言える?」「はい……」女子生徒は深く息を吸い、ゆっくりと話し始めた。「なんだか大きい広場のような所にいたんです。まるで公園のような……空はなんだか異様で、赤黒く、月よりも数十倍ある何かが浮かんでいました。周りには形容しがたい化け物が溢れかえっていて……その化け物に衣百合さんが体を真っ二つに……そこに黎慈さんもいて……」体が小刻みに震えていた。衣百合は背中をさすりながら穏やかに言った。「言ってくれて
黎慈は少し早めに目を覚ました。寝巻きのままロビーへ降りていくと、衣百合が朝食の準備をしていた。階段を下りる音に気づいた衣百合が、こちらに手を振ってきた。「おはよう」「今日は起きてくるの早いね?大丈夫?」黎慈はまだ睡魔の残る目を擦りながら頷いた。「何か手伝えること、ある?」「大丈夫だよ。ロビーに座ってて」言われるがまま、黎慈はロビーの机に向かった。ほどなくして亮が部屋から降りてきて、向かいの席に座った。「おはよう」「……おはよう」亮はまだ寝足りない顔で、座ったままうつらうつらとしていた。しばらくすると、衣百合が朝食を運んできた。寝ている亮の頭を軽く叩く。「ほら、子供じゃないんだから。あ、身長は子供かも?」「え、キレそう」三人は朝から小さく笑い合った。学校に着くと、すぐに朝のホームルームが始まった。「え~、今日は放課後に部活動編成があるから、部活に所属してるやつはちゃんと行けよ」担任はそう言い、部活動ごとの集合教室が書かれた紙を黒板に貼った。黎慈は陸上部の件を詳しく聞くため、昼休みに衣百合の教室へ向かった。教室の前まで来ると、衣百合は友達らしき女子生徒と昼食を食べているところだった。邪魔になるのを懸念して少し迷っていると、衣百合がこちらに気づき、わざわざ出てきた。「黎慈くん、どうしたの?」「いや~、今日の部活動編成、どうしようかなって」「あー、なるほどね。ちょっと待ってて」衣百合は友達に断りを入れ、昼食を持ってきた。「ここじゃ話しづらいでしょ?あの空き教室で食べよ?」「じゃあ、先に行ってて。教室から持ってくる」「うん、わかった」黎慈は自分の教室から弁当を持って空き教室へ向かった。そこにはすでに衣百合が机と椅子を用意してくれていた。対面に座り、「いただきます」と弁当を開ける。「で、部活の件を私に相談したいと」黎慈は口に物を入れながら頷いた。「なるほどね。まあ、結構緩めの部活だし。入ってもいいと思うけどね」「そんな感じの部活なの?一回しか見学行ってないからあんまり分かってないんだけど」「めっちゃフランクだよ? とりあえず入ってみるのはいいと思うよ?」「そうなんだ。とりあえず入ってみようかな」「うん。部長と話したと思うんだけど、良い人だから」衣百合は弁当箱を仕舞いながら続けた。「ところで、そ
放課後になると、衣百合が教室に迎えに来た。堂々と教室に入ってきた彼女は、迷わず黎慈の席の前まで歩いてきた。「ほら、行くよ!」黎慈は席を立ち、衣百合とともに教室を出た。下駄箱で靴を履き替えた後、黎慈はふと聞いた。「で、どこに行く予定なの?」「まあまあ、とりあえず気にしないでついて来てよ」「きっと楽しめると思うからさ」黎慈は言われるがまま、衣百合と他愛のない話をしながら目的地へ向かった。数分歩くと、衣百合がおしゃれなカフェの前で足を止めた。「もしかして、ここ?」「そうだよ!おしゃれなカフェでしょ?」衣百合が店内に入っていくのを見て、黎慈も後を追った。「いらっしゃいませ~。お二人様ですか?」「あれ、衣百合じゃん!久しぶりだね!」「うん、久しぶり。ごめんね、あんまり来れなくて」「いいよいいよ。気にしてないから」衣百合と楽しそうに談笑していた女性店員が、黎慈の方を見た。「あれ? 衣百合、もしかして……?」「違うから!ただの友達!」黎慈は軽く会釈をした。「初めまして」「衣百合さんのお友達をさせてもらってます、枝先黎慈です」「お二人はどういうご関係で?」衣百合は優しく笑う。「ただの友人だよ」「奥の席にご案内しますね」暖簾をくぐると、落ち着いた雰囲気の個室のような空間が広がっていた。四人掛けのテーブルに、黎慈と衣百合は向かい合って座った。「では、ごゆっくり~」女性店員が去った後、衣百合が少し照れくさそうに言った。「久しぶりの休みだったからさ、ちょっとここに顔を出そうかなって」「ごめんね? 付き合ってもらって」「気にしてな
鳥のさえずりが聞こえ、黎慈は眠たい目を擦りながら起き上がった。スマホを確認すると、午前七時半。月曜日の朝だ。制服に着替え、ロビーへ降りると、亮がすでに朝食を食べていた。「おはよう」「おー、おはよう黎慈。今日から学校だぜ?月曜日が一番きついわ」黎慈は辺りを見回し、衣百合の姿がないことに気づいた。「あれ? 亮、衣百合は?」「俺が起きた時にはいなかったな」「てか、最近お前ら二人仲良いよな。どう、いい感じ?」「ただの友達としての付き合いだよ。朝食はどこに置いてある?」「キッチンに置いてあるよ」亮はため息を吐いた。「しっかし、衣百合も大変だな。こんな鈍感な奴だとは……」黎慈はキッチンへ行き、皿をロビーへ運ぼうとしたところで、皿の下に手紙が挟まっているのに気づいた。『先に学校に行ってます』『黎慈くんも早めにきてね。夢について、結果を聞きたいから』黎慈は急いで朝食を済ませ、亮より先に寮を出た。学校に着くと、空き教室にはすでに景佑と衣百合が待っていた。「待たせたな、二人とも」「遅いぞ」黎慈は教室の隅から椅子を引き、衣百合の前に座った。そして、夢の世界で起きた出来事を詳しく話し始めた。「あの扉の中には、誰かの記憶が入っていたんだ」「どんな内容の記憶だったんだ?」教室内で女子生徒にいじめのようなことを言われていた事。男子生徒にもいじめられていたこと。親にも嫌味を言われていたこと。見たことをできるだけ鮮明に話した。景佑と衣百合が驚きの表情を隠せない。黎慈は淡々と続けた。「あの出来事が、本当に夢の主人の記憶だとしたら…
目を開けると、先日離脱した場所に立っていた。景佑もすでにそこにいて、すぐに作戦の最終確認に入った。「いいか景佑。お前は最初に扉の近くまで行って、化け物をできるだけ引き連れてくれ」「その間に俺が扉に入る」「大丈夫、ちゃんと覚えてる」「あくまで俺は陽動だな。無理に全部倒さなくていい」「そうだ。扉の中の記憶を見たら、公園の中央の休憩所で合流しよう」黎慈は公園の中心にある小さな建物の方を指差した。景佑は頷き、二人は扉が見える位置まで慎重に近づ
「ようこそお越しくださいました」黎慈はゆっくりと瞼を開けた。目の前に、いつもの少女が立っている。「お連れ様の場所にお連れしましょうか?」「ああ、頼む」少女は何かを小さく唱え始めた。数秒後、視界が一気に明るくなった。目を開けると、景佑が複数の化け物に囲まれ、苦戦している最中だった。黎慈は即座にブラムを起動させ、助太刀に入る。二人の連携で化け物を一掃すると、景佑が息を
夕食を食べ終えると、景佑は「じゃあな」と軽く手を挙げて寮を後にした。入れ替わるように亮が帰ってきて、ロビーで顔を合わせた。黎慈はふと思い出し、亮に声をかけた。「そういえば、駅で一緒にいた女の子は誰?」「ああ、ただの友達だよ。見てたなら声かけろよな~」「流石に気まずい」亮は笑いながら自分の部屋へ上がっていった。亮の姿が消えると、隣に座っていた衣百合が小さく息を吐いた。少し涙ぐんだ目で黎慈の方へ寄りかかってくる
黎慈は一度公園を離れるためにバスに乗り、市内で一番栄えている光里山駅へと向かった。「お客様へお願いです。車内は大変揺れますので、完全に停止するまで立ち上がらないようにお願いします」車内アナウンスが流れた。どこか懐かしさを感じさせる音質だ。「次は、光里山駅前、光里山駅前。お降りの際は、お忘れ物のないようご注意ください」黎慈は降りて、駅前を少し歩いてみることにした。この駅は県内で新幹線が停まる数少ない大きな駅で、東京から来た時